小林ゆみ事務所
平成28年決算特別委員会-10月11日-(全文公開)
決算特別委員会
学力調査について

◆小林ゆみ 委員 学力調査についてです。使用する資料は、区政経営報告書、「平成27~29年度杉並区教育ビジョン2012推進計画」です。 区が行っている学校教育への支援のうち、学力調査について幾つかお伺いしてまいります。 まず、区独自の学力調査の項目には、学習習熟度や個に応じた指導が充実していると感じる子供の割合などがありますが、そもそもこの調査はどのような目的で行っているのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 国や都の学力調査がありますけれども、その調査の結果から捉えた本区の子供たちの学力に関する特定の課題を詳細に分析するため、また、各学校が個々の子供たちのつまずきや学び残しの状況や、ふだんの授業の様子を把握して、その後の指導に生かしていくことを目的としてございます。
◆小林ゆみ 委員 区政経営報告書146ページを見ますと、区立中学校3年生の学習習熟度は51.2%となっており、目標値の70%を下回っています。「平成27~29年度杉並区教育ビジョン2012推進計画」を見ると、平成26年度は50.5%ですので、当該年度は0.7ポイント上昇はしましたが、依然として目標値との乖離が見られます。この原因を区はどのように分析されていますか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 5段階で学習習熟度は見ていますが、学年の進行に伴いまして、学習習熟度の低いR1、R2の割合が増加する傾向にありまして、学び残しやつまずきが新たなつまずきや学び残しを生み、学年が進むにつれて累積されていくことから、特に中学3年生の学習習熟度は低い状況にあると分析しております。義務教育9年間における学びの連続性、そのさらなる充実と、それから主体的、対話的な深い学びの実現に努めていく必要性を感じております。
◆小林ゆみ 委員 やっぱり学年が上がると難易度が増すということですね。 また、そもそも70%を目標値に設定した理由は何でしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 本区が指標としておりますこの数値は、国や都の学力調査が用いております平均正答率とは違いまして、学習習熟度の割合であり、学習指導要領の内容がおおむね達成できている生徒数の割合、つまりR3以上、R3、4、5の割合を示しております。平均正答率で20点を上げるのは相当難しい状況であるというふうに考えますが、学習習熟度に関しては、それほど難しい状況であるとは考えておりません。 実は、R3の一歩手前、R2の段階の生徒の中には、あと二、三問でR3になれる生徒も多く、中3約2,000名のうち、例えば200名ほどの生徒が基礎的な問題をあと3問正答できれば達成できる目標値となってございます。33年度に掲げている80%を見据えても、妥当な数値と考えております。
◆小林ゆみ 委員 学習習熟度は、経年ではどのような傾向にあるのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 先ほど申し上げたように、学年の進行に伴って、学習習熟度の低いR1、2の割合が増加する傾向にありますが、単学年で経年を追っていきますと、そこは上昇傾向にございます。
◆小林ゆみ 委員 学力調査によって明らかになった生徒たちの習熟度別に、個に応じた指導は行っているのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 当然ながら、本調査結果をもとに、個に応じた指導の充実に努めております。各学校におきましては、当調査結果をもとに、主に夏季休業中に学力向上校内研修を実施しまして、2学期からの指導に現在役立てております。済美教育センターにおいても、指導主事等が校内研修において講師を務めるなど、支援しているところでございます。
◆小林ゆみ 委員 ぜひよろしくお願いいたします。 当該年度の学力調査に当たり、生徒たちは事前に過去問の演習をしたのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) そのようなことは一切しておりません。
◆小林ゆみ 委員 それはやらないほうがいいという判断なのか、もしくはどういう判断で過去問演習を行っていないのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 調査の目的としては、日常の学習の成果を見るものでありまして、過去問の演習は本区の調査目的からもふさわしくないと考えており、学校に対してもその意図を周知しているところでございます。
◆小林ゆみ 委員 例えば英語ではどのような問題が出されるのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 英語においては、いずれの設問も、日常生活で英語を使ってコミュニケーションを図ったり、ひいては英語を使って考えたりする問題が出されております。設問は、基礎C、基礎B、活用A、活用Sの4つのレベルで出題しています。基礎Cは主に知識を問う問題、それから基礎Bが技能を問う問題、活用Aでは英語の文章を読み、設問の答えを作文したりする問題がありまして、活用S、これが一番難易度の高いものですが、設問の趣旨を理解し、自分の意見や考えを英文で表現する問題などを出題しております。
◆小林ゆみ 委員 この調査は何月に行っているのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 例年5月上旬に実施しております。
◆小林ゆみ 委員 英語の内容についてもう少し申し上げますが、先ほどおっしゃった基礎C、B、活用A、Sといった内容の問題を解くには、中学校3年生の5月までで習う単語で対応可能であると考えますので、問題は、英作文ですとか、そういった自分の考えや意見をあらわすという力だと思いますので、余りにも多くの語彙力というのは必要ないと考えられます。そのため、そういった思考力を要する問題には、学校の授業内でどのように対策をしているのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 委員御指摘の部分は、例えば書くこと、英作文を書いたりというようなところが思考力を問う問題には多くございますが、そちらのほうの領域における学習習熟度は、確かに低い状況にございます。授業においては、身近なことや自分の思いや意見などを、既習の言語材料を駆使して書く活動の量をふやすなどの対策をとっております。
◆小林ゆみ 委員 ぜひ、さらに英作文の対策をよろしくお願いいたします。 また、この学習習熟度は一般の区民の方も目を通すものか、確認いたします。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 区立中学第3学年の学習習熟度につきましては、指標として用いられているため、区民の方もごらんいただけるものと存じます。
◆小林ゆみ 委員 仮に区民の方がこの数値を見た場合に、やっぱり区立中学校よりも私立中学校のほうが教育の質が高いのだという偏見というか勘違いをすることが懸念されますが、そもそもこのような結果となるのは、設問の設定の仕方の問題なのではないでしょうか。もしくは、先ほどおっしゃったR1から5の5段階習熟度のR3、4、5の合計の割合という数値は少々わかりづらい、または結果に反映されづらいと考えますので、今後はこの表示を改めたほうがよいと考えますが、見解を伺います。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 御承知のとおり、本区の学力は、国や都の学力調査の平均正答率からすれば高い状況にございます。ただし、ここで平成27年度の国の調査結果を示しますと、例えば中3の数学、知識の活用を図るB問題の平均正答率は、国が41.6、都が44.0、トップ県の福井が47.7、本区がそれよりも上で47.9でした。平均正答率が47.9です。トップ県よりも0.2高いといって安心できる点数ではございません。このB問題も、学習指導要領に準拠した内容で出題されております。このことから、本区の設問の設定には問題はなく、また、指標で示した数値も妥当と言えると考えております。 全国的に見て高いレベルには確かにあります。しかしながら、それで安心することなく、全ての子供たちの学力保障を目指し、一層努力していく教育委員会の姿勢をあらわしている数値と考えております。とはいえ、わかりづらさについては課題と認識しておりますので、表示等については研究してまいります。
◆小林ゆみ 委員 ぜひよろしくお願いいたします。 また、思考力、判断力、表現力、能動的スキルというのは、子供たちが社会に出た際に必要となるスキルですが、これらのスキルを上げるためには、アクティブラーニングを取り入れた授業が効果的と思われますが、アクティブラーニング型授業では、杉並区の子供たちに必要な思考力、判断力、表現力といったスキルを伸ばすために、具体的などのような授業を行うのでしょうか。例えば英語だったらこれとか、そういった科目における具体的な指導方法例をお示しください。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) アクティブラーニングの視点による授業は、主体的、対話的で深い学びの実現を目指すものと言われております。思考力、判断力、表現力といった汎用的認知スキルを伸ばすためには、従来の、チョーク・アンド・トークと我々は呼んでいますが、チョークと話すということで授業をしている、この一斉授業から脱却していく必要がございます。 授業の基本的な展開は、まず知識や技能を学び、それを活用しながら、多様な他者と協働し、課題の解決に向けて粘り強く思考し、確かな習得や新たな知への更新を図るといった流れとなると考えております。理科でいえば問題解決的な学習、英語でいえば、先ほど申し上げたコミュニケーション活動がその具体として挙げられますが、大切なのは、型にはめるのでなく、自分事の問題解決になっているか、子供たち自身がアクティブラーナーになっているかを常に把握しながら授業を進めていくことと考えております。
◆小林ゆみ 委員 また、英語教師なのに英語を瞬発的に話せないとか、数学教師なのに問題や別解をみずからつくれない、もしくは国語教師なのに模範的な小論文を書くことができないという、生徒に教える内容が教科書に書いてある域を出ない学校教師が多いといった話を、私が実際に予備校講師を行っていた際に生徒からよく聞いておりましたが、少なくとも杉並区ではそういったことがないように、まずは教師側の能動的なスキルを底上げしていく必要がありますが、そのために区が行っている取り組みは何かあるのでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 本区の教員の学ぶ意欲は高く、杉並教育研究会など、教員が自主的、主体的に学ぶ研究会の活動も盛んに行われております。今年度からは、杉並教育研究会と済美教育センターが共同して、教員の専門性を高める研修会も実施しております。教員の評価も高い状況にありますので、さらに充実してまいりたいというふうに考えております。
◆小林ゆみ 委員 ぜひよろしくお願いいたします。 また、夏休みや休日を活用したパワーアップ教室を行っていると思うんですが、現在のJTE以外にも、例えば外部の塾講師など、さらなる外部人材の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
◎済美教育センター統括指導主事(大島) 今現在、中学校において実施している夏季パワーアップ教室や、中学3年生の希望者を対象に実施している休日パワーアップ教室、ともに塾講師などの外部人材の活用を既に図っております。しかしながら、次期学習指導要領の動向も見ながら、多様な外部人材の活用については研究してまいりたいと考えております。
◆小林ゆみ 委員 お願いします。 先ほどもおっしゃったように、杉並区の子供たちの学力は、全国的に見ると、秋田県ですとか福井県と同等の高い水準にあると聞きます。ただ、現場を見ていない人間からは、数値でしか評価されない、判断されないという場合がありますので、杉並区のハイレベルな教育というブランドを確立するためにも、学習習熟度の表示の見直しの検討や、今後のアクティブラーニング型授業による子供たちの学力向上に努めていっていただき、数値としてもよい結果を残していただきたいと要望し、私の質問を終わります。